怒りの表現

 東京富士美術館で開催中のゴヤの版画の展示を観てきた。大変暗い筆致の風刺画で観ていてつらくなるような作品だった。宮廷画家であったゴヤは本来、時代を美化する役割を持っていたはずだ。それがフランスの支配を機に体制批判の作品を連続していく。その数の多さに今回は圧倒された。かくまで深い傷を負ったのかと察せられたのである。

 西洋の美術は神話や王族や貴族の理想的な姿を描いてきた歴史が長く続いて、その中で風景画の技法も磨かれてきた。ある意味、理想的な一瞬の再現が絵画だったのである。それがゴヤのように時代の告発のような作品が生まれるに及んで新局面が生まれてきたのだろう。美術は怒りも表現できることを証したのである。

 現代、この役目を果たすのは何なのだろう。時代を批判する力は芸術にあるのだろうか。悲しく辛い対象にも目を背けない芸術に注目していきたい。

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