文学談義

 先日、偶然訪れた喫茶店で懐かしい思いをした。出先ゆえ道案内もおぼつかないので、目に入った喫茶店に入った。チェーン店ではない個人営業の店に入るのは久しぶりだ。

 年配の店長らしき人のワンオペであった。装飾なども派手ではなく、いかにも喫茶店という感じのする昔ながらの雰囲気があった。自分が学生時代に行ったのはこのような店だった。

 少し離れたところに座っている学生と思われる3人組がしきりに話し合っている。聞こえてきたのは文学作品の評価についてであった。彼らにとっては近代文学は古典に属するようでその文体や、主題についての話がなされていた。これもまた懐かしい風景だ。最近の若者は文学作品について論じ合うことは少ない。本を読まないし、まして文学のような実用書ではないものは読む価値さえもないと考えているようだからである。

 彼らは文学部の学生ではないようだ。店の場所からして東京大学の学生の可能性もある。彼らに期待していうならば、もう少し学を深めて欲しいと思った。確かによい選択はしているが、読みが浅い。ガイドブックに書いてあるようなことを言いあっても、と考えた。実用的には見えなくても必ず何らかの世界観の形成には役立つ、かもしれないのだから。

 古いスタイルの喫茶店であったからこそ、かつて自分がそうであった頃の学生時代をつい重ねてしまった。チェーン店ではない店に行くのにはそういう効果がある。

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