人生の中でもっとも昔の記憶は何だろう。私の場合は幼稚園に通っていたころの一コマが思い浮かぶ。ただ、それにはその後の人生の中で獲得した様々な経験が上書きされているので純粋な記憶かどうかは分からない。とにかく、決まったいくつかのシーンだけが残っている。
何が記憶に残るのか。それもかなり偶然な気がする。ことの重要性や深刻さの度合いで記憶が選択されるのかといえばそうでもない。大切なことはむしろ忘れることが多いのに、何気ないことの方が記憶に残っている。特にとてもショックな出来事はなぜか忘れてしまう。心の防衛本能が働いているのだろうか。
記憶の下限はどこにあるのだろうか。死の間際まで意識がある場合はまれだ。多くの人は記憶の下限を迎えて、それから身体の死を迎える。だからその下限を確かめることはできない。今の私の記憶がこれからもそのまま残るものなのか。そのいつか分からない下限のときまで持っている記憶は何なのかと考えてしまう。
