子どもの頃、潮干狩りに行って妙な生物に出会ったことがある。平べったく、模様のような穴が付いている貝のような何とも言えないものは始めは何だか全く分からなかった。貝殻か魚の骨の一部かとも考えたが、どれも当てはまりそうもない。
子ども用の図鑑で調べるとスカシカシパンという。名前も変だ。似ても似つかないがウニの仲間なのだという。私が拾ったのは恐らく死んだ個体だつたが、生きていても動作は極めて遅く、海底の砂地に何時間もかけて潜り、バクテリアなどを摂取しているらしい。
ウニ風味の菓子パンならば魅力的だが、実物はとても食用にはなりそうもない。命名の妙で可愛らしい印象になったが、相当奇妙な生き物だ。
子どもの頃は変な生き物に出会う度に感動した。そしてまだ見ぬ生き物を見つけようと期待したものだ。毎日のように図鑑を広げていたから、今でも何となく挿絵や写真を思い出すことがある。