関税が世界を揺るがしている。アメリカの実施した相互関税という考え方は、国際的な立場の違いを無視して、数字上での平等を述べたものだろう。強者の論理であり、危険な考え方だ。アメリカの一面が突出した形で現れた。
日本も例えば米の輸入に関してはかなり高い関税をかけている。米への拘りは文化的なものであり、全国の田園の維持のために行われている。それぞれの国によって保護したい産業があり、そこに高関税がかけられていることが多い。それらを等し並に不公平だと言って関税をかけていくのは、細部の事情をみずに、あるいは意図的に利用しているとしか言いようがない。
アメリカがこのようなやり方になったのは、かつての国力が失われていることの証左だ。アメリカをもう一度偉大な国にするというのがトランプ大統領の口癖だ。つまりすでに偉大な国ではないという自覚があるのだ。多額の国債や、国際社会における中国の台頭といった圧力がトランプ政権を動かしている。
人によっては第三次世界大戦への端緒を開いたという。それはいい過ぎだと断じたい。ただ、国際協調の機運が崩れれば決して架空の話ではなくなる。人類を愚の世界に陥らないようにするのが私たちのつとめだ。