教えることの妙技は完全に答えを出さないことなのだろう。過去に影響を受けた恩師を思い返してみても、最後まで面倒を見てくれた人はいない。ある程度までナビゲートしたら、突然突き放す。結果として、やったのは自分の力だと錯覚する。学習者にそう思わせるのが本当の師匠というものだろう。
教員の中にも変に自分の力量を誇示したり、過去の成功例を並べる輩がいる。そういう必要に迫られて自己の経歴を陳述せざるを得ない人もいるから一概には言えないが、私はそこに哀れを感じる。師たるもの自らの優位を誇るべきではない。自分を越えてゆく教え子に対して満悦すべきなのだと、個人的には考える。
一つ手前で突き放し、本人の成長を見守る。そういう教師が我が理想だ。自分は程遠い。せめてそんな小説でも書いてみようか。