起きたら

 朝起きると私は周囲が変化しているのに気付いた。見たこともない花が咲いている庭に鳥が数羽遊んでいる。遠くから横笛の音が聞こえるのは誰が吹いているのだろう。

 しばらくして分かった。ここには以前来たことがある。というより長く暮らしていたところではないか。どうして忘れていたんだろう。今までどうして思い出せなかったんだろう。長い旅をしてようやくたどり着いた気がしている。長い長い旅の果てにようやくたどり着いた場所だ。

 でも、そこには人影はない。先ほどの笛の音もいつの間にか聞こえなくなってしまった。風が吹き、わずかに木々の葉を揺らし、その先の花々も同じように動き続ける。

 そうか。そういうことか。私は納得した。自分のことを考えようとしたとき、それができないことをはじめは気づかなかった。誰なんだお前は。どこにいるんだ。そうした疑問に答えるすべがなかった。

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