
人の性格や行動は実はかなり複雑だ。優しい人にも厳しい一面はあり、陰険と思われている者が影では善人であったりする。本当は一言では言い切れない。それを強引に分類していまうのが私たちの日常である。
こうした人物像の簡略化は、時間とともに進行するのかもしれない。相手との交渉がなくなると、過去の記憶の中でその人物を想起する。その思い出の人物像はすでにまるめられており、時間とともにさらに末端が削られる。故人に対してはもう出会う機会はないから、時間とともに固定していく。
写真に例えてみる。撮影の時点でその人の典型的な姿が選ばれる。それでも何枚もの写真の中にはその人物の様々な一面がほのみえる。ところが時間とともにその中の写真の大半は失われ、数枚だけがその人の思い出として残るのだろう。
人物像はこのような仕組みでできている。さらに英雄伝説に誇張がありがちなように、このわずかな印象も変質を始めていく。本当はどんな人物だったのか容易には分からなくなる。人を考えるときにはこうした仕組みを思い出さなくてはなるまい。
