田園の風景を描く作品には魅力がある。ただ、それが画家によって選ばれた空間であることには注意するべきだろう。絵画は偶然の産物ではない。写真だってそれが芸術として撮影されたとき、映像の選択はなされている。
仮に私が画才を身につけ、田園風景を描くとしたなら何を対象とするだろうか。そびえ立つ高山や、小川のせせらぎ、田中の道を歩く人々などいろいろ思い浮かぶ。ただ、そのどれもがすでにどこかで見たことがある。絵になる風景というものは確かにあり、それ以外を描くことは難しい。
コンクリートとアスファルトに囲まれた毎日を過ごしている私にとっては田園は憧れの場所だ。だが、もし生まれたときからその地に暮らし、かつ都会の喧騒を知らずに育ったとしたらここまでの感情を抱くだろうか。田園風景が描かれる心的要因はいろいろありそうだ。