戦国時代末期と言われる桃山時代が文化的には豊潤な期間であったことを再認識した。政治史と文化史は連動しながらも別物だ。
東京国立博物館で開催中の桃山時代の美術展を鑑賞して、いろいろ気づいたことがあった。金箔をふんだんに使った絢爛豪華な屏風絵と極めて簡素な水墨画が同じ時代に発展していたことはもっとも象徴的な現象だ。螺鈿細工の緻密さと大胆な造形の茶器の対比も面白い。およそ実用的とは言い難い武将の甲冑の装飾もこの時代の特徴である。
おそらく戦乱に明け暮れていた時代は住みにくかったに違いない。正気でいるのも大変なことだと思うが、その一方で独自の文化が展開していた。その裏にあったのは狂気なのか。何が造形に駆り立てたのかは大いに気になっている。