見慣れた風景を何らかのきっかけで写真にとり、後から見直してみると思わぬ発見があることが多い。毎日見ている風景にも関わらず、ここにこんなものがあったのかと発見し驚いてしまう。
私たちの知覚は多分に選択的で自己中心的だ。結局気になるのものしか見ていない。視角に入っても意識されなければ映像として感知されない。
絵を描くときにそれを実感する。描きたいもの以外は省略してしまう。あるいは描きたくないものは意識から抜けているといった方が事実に近いかもしれない。見えているのが風景なのではなく、見ているのが風景なのである。
このことを考えると、視覚による記憶というものがいかに恣意的なものであるかを再認識できる。百聞は一見に敷かず、されど真実にはあらず、である。