交流は別次元で

 韓国が日韓軍事情報包括保護協定を破棄した報道は極東の軍事情勢に詳しい人たちの間では相当な衝撃であったようです。まるで韓国が別陣営に組してしまったかのように考える人もいるようですが、ここは冷静に処すべきです。日韓の国民のうち冷静になれるのは日本の方です。

 韓国では慰安婦問題や徴用工への補償をめぐって日本への責任追及をする動きがあったところに、日本が半導体素材などを輸出規制したことに端を発して、一気に反日の機運が高まりました。日本製品の不買運動や日本への旅行自粛なども起きています。親日家を非国民的に扱う歴史的な経緯をもっている韓国においては、このような時流においては付和雷同する国民運動が起きているといえます。そのようにふるまわないといけないという同調圧力も強く働いているように察します。また、韓国政府も反日運動を政権支持に利用しているかのような様子もうかがえます。韓国の国民がこの対立に冷静に対処するのはかなり難しい状況にあることを推し量るべきでしょう。

 日本ではいわゆる嫌韓の人々がネットなどに次々に書き込みをしていますが、実はリアルな政治集会や抗議運動はほとんど報じられていません。きわめて過激な小さな団体が何かをしているのかもしれませんが、社会を動かすほどの組織的な韓国への抗議運動は行われていないのです。韓国の製品や、テレビドラマ、タレントなどの文化的なコンテンツに関する拒否の動きもありません。むしろ若者はそれらを好んで使っていることはほとんど変わりがありません。

 NHKを含めて韓国のドラマは多くの放送局で放映されています。またK-popの話題は絶えることはなく、韓国料理の店もにぎわっています。嫌韓の人よりもはるかに多い韓国文化愛好者がいることは紛れもない事実です。私たちは政治家たちの手練手管に便乗する必要はありません。よいものはよいと認め合うことを続けていかなくてはならないでしょう。

 政治的な、というより両国政権の対立として映る今回の混迷を国民は冷静にとらえるべきです。本当に利するのはだれか、喧嘩の野次馬をしているうちに自分自身の立場を悪くしていかないか。メタな認識をすることがいま最も必要なことだと思うのです。

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