いつまでも忘れられない思い出の舞台はなぜか時間が経過するごとに美しくなっていくようです。実際には様々な苦難とか挫折とかが伴い、ありふれた空間での出来事であったはずなのに。
恐らくそれは私たちの脳の構造によるものなのでしょう。私にはこの方面で語ることはありません。ただ、こうした過去の美化が私たちを随分救ってくれていることは確かだと考えています。生々しい過去をそのまま脳裏に保存するのなら、きっと精神は耐えきれないはずです。
都合よく整えられた過去の風景の中でも、少年時代のそれは特別な輝きを放ちます。実に大したことがないエピソードでも神話のような重みを持ちます。恐らくそれがその後の人生に多大な影響を及ぼしているからなのでしょう。私にもいくつかの思い出があり、それがいまの考え方感じ方につながっていることを実感します。
思い出の場所を再訪することは脳裏に増殖した世界をある意味リセットして、新たな想像をつけ直す機会なのかもしれません。