北千住には小学校に上がる直前まで住んでいた。親が東京での生活を始めた借家があったのだ。
年齢が年齢だけに覚えていることは少ない。隣に同年齢の少年がいたのは心強かった。下町ゆえいろいろな住民が雑居していたようだ。近くにほうきを作っている工場があり、演歌歌手の住まいもあった。ヤクザなので近づかない方がいいといわれていた家もあった。当時相当売れていたか歌謡曲の作曲家の大きな屋敷があり、白い犬を飼っていた。その犬に噛まれて嫌な思いをした。入り組んだ細い道は蝋石で落書きする遊び場になった。ローラースケートをして転んで擦りむいた。
断片的な記憶が浮かぶ。中には混同したり、事実とは異なることもあるのだろう。いま北千住はかなりきれいになり、かつての場末感はなくなっている。